2巻のテナルディエ家の人々
・夫婦の評判
夫婦がコゼットを預かっている事について、村人達は善行として捉えています。
「あのテナルディエ夫婦は、感心だよ。お金持ちでもないのに、あの家に捨てられていった子供を育てている!」(1-4-3)という風に村では言われています。
・テナルディエ(2-3-2)
バルジャンが訪れる1823年は50歳過ぎです。小柄、痩せて青ざめ、骨ばって弱々しく、病気に見えるが素晴らしく丈夫、といった特徴が描写されています。
用心深くいつも微笑し、乞食に対しても丁重だが一銭も恵まないと言う人です。イタチのような目つきをして、文学者のような顔つきをしています。
ナポレオン戦争の後にモンフェルメイユに来て、居酒屋を開きました。あとあと描写される話なのですが、この時の元手は死体からの略奪で稼いだお金で、かなり後ろ暗いものでした。
ミュージカルでもコミカルに歌われていますが、何でも使ったものは金をとる方針です。鏡も影で減った値段をつけますし、犬が食べたハエの代金も払わせると言う徹底ぶりです。
宿屋の経営はうまくいっておらず、1823年には1500フランの借金があります。これがそのままコゼットの値段になりました。ちなみに払わせてから後悔してもっとせびろうと追いかけますが、武器を忘れて丸腰だったこと、バルジャンに理詰めで断られたこと、なおも追いかけると凄い目で睨まれたことで諦めました。
・テナルディエ夫人
ファンティーヌが通りかかった時は30を少し過ぎたくらい(1-4-1)、バルジャンがコゼットを迎えに来た1823年は40歳に手が届く年頃です。大柄、ブロンド、赤ら顔、脂ぎって肉付きがいい、ごつくてずんぐりしてすばしこい、といった特徴を持ちます(2-3-2)。
焼き餅焼きで、「亭主が女中を大切にしすぎる」ために女中を置くのをやめたので、コゼットをこき使っています(2-3-2)。
ミュージカルでは夫人の方が強そうですが、原作ではテナルディエが支配者で、夫人は絶対服従しています。
三文小説を読むのが大好きで、娘達の名前ももそこから付けています(1-4-2)。
自分の娘を溺愛するあまり、預かっているコゼットが憎たらしいという感じ方をする人です。家族の場所を奪われ、自分の子供達の吸う空気を減らしている気がするのだと、ユゴー先生は説明されています(1-4-3)。
・エポニーヌ(2-3-8)
原作小説では、テナルディエ夫妻には五人の子供がいます。エポニーヌが一番上です。
彼女は妹のアゼルマと共に「実にきれいな」女の子で、田舎娘というより町の娘らしく見えます。元気でこざっぱりして太っていて、溌剌と健康そうで、見ていて気持ちがいい女の子です。母親の手入れが行き届いて、厚着しても着こなしが良くて、そしてわがままいっぱいです。
姉妹はコゼットを蔑んでいますし、コゼットの方でもエポニーヌとアゼルマへの妬みがあります。
・ガブローシュ (2-3-1)
原作小説では、実はテナルディエ夫妻の長男です。ただし、赤ちゃんの頃から一貫してほぼ育児放棄されていて、パリでは家を離れてストリートチャイルドみたいになって逞しく生きています。
1823年は満3歳と少しで、冬生まれです。テナルディエ夫人は、育てはしますが可愛がっていません。
後々の巻で描写があるのですが、テナルディエ夫人は娘のことは溺愛しますが、息子達の事は全く可愛がらない女性です。ガブローシュの下にもう二人の男の子を産みますが、子供を使って詐欺をしたい知り合いに売ってしまいます。
・宿屋の名前
ミュージカルでも宿屋の場面でその文字が入り口に掲げられていますが、テナルディエの宿屋の戸口には「ワーテルローの軍曹に」との文字の添えられた絵が掲げてあります(1-4-1)。ワーテルローの戦場から傷ついた将軍を救い出した軍曹が開いた店、という触れ込みです。宿屋は「ワーテルローの軍曹の店」と村では呼ばれています。
この戦場での「大活躍」を彼の視点から話したのが2-3-2、語手ユゴー先生の視点から見たのが2-1-19の話です。
ざっくり言うと、テナルディエは「死人から泥棒する」という厳しく禁じられた行為で戦場で稼いでいました。宿屋を開いたのも、そのかっぱらいのお金を元手にしています。
この「助けられた将軍」が、後々の話で大きな役割を担います。
・「お前のおっかさんから金が来たが」(2-3-10)
ミュージカルでは「何が買えるね、10フランぽっちで」と夫人は怒ってコゼットに八つ当たりしますね。金額的に一致するのはファンティーヌが髪を売って得た10フランなので、それがその頃に届いたのかもしれません。
原作小説ではファンティーヌが髪を売ってから逮捕までも、その後バルジャンが名乗り出るまでも、それぞれ期間が空いています。ファンティーヌの逮捕から名乗り出るまでの間に、バルジャンはテナルディエに幾度か金を送っていて、コゼットを引き取りに来た際のファンティーヌの負債は35フランになっていました。バルジャンはそれに対して、テナルディエが要求した通りに1500フランを渡しています。
ちなみに35フランの負債というのも、ファンティーヌの計算ではもっと少なかったところにテナルディエが送りつけた計算書によるものです。
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