(合作)舞台-原作 対応一覧 2幕
♪バリケードを築く
【1832年6月5日、パリ】
◯舞台との違い(原作準拠)
・バリケードにて
バリケードができるまでの流れは省略されている。
ジャベールは敵の様子を見てくると志願はしていない。(→♪再びバリケードで参照)
また、ミュージカルとは違い、ジョリーとレーグルはまだ列に加わっておらず、ABC友の会のもうひとつの拠点、居酒屋コラントでグランテールと飲んだくれている。そのレーグルが通りかかった彼らに「どこへ行くんだ?」と叫び、「防寨を作りに。」との返答に、「じゃあここに作れ。」と言ってコラントの前にバリケードが作られた。[4-12-2]グランテールは2人がその後革命に行ってしまっても、アンジョルラスに「ここから立ち去れ」と言われてもコラントから動かなかった。
「ここに僕を眠らしてくれたまえ……死ぬるまで。」
グランテールはこう言って、革命の最後まで起きることは無かった。[4-12-3]
・手紙を運んだのはエポニーヌではなかった
コゼットへの手紙を運んだのはエポニーヌではなくガブローシュであった。さらに時系列も違って、エポニーヌが死んでからである。(→♪恵みの雨に詳細を記載)
しかも、エポニーヌがバリケードにいたという事をマリウスが知るのは彼女が撃たれた後で、もう死ぬ直前というタイミングである。
◯舞台の補足(原作準拠)
・革命開始
ラマルク将軍の葬儀中、群衆の中から馬に乗った赤旗を振る男が現れ、それに伴い群集は叛徒化し、警備していた政府軍は発砲を始め、六月暴動が始まることとなった。[4-10-3]
その日、アンジョルラスのバリケードだけではなく、パリ市内には27ものバリケードがたてられた。[4-10-4]
葬式の最中の騒ぎの後、ABC友の会の学生らは民衆に「バリケードへ」と呼びかけて先導[4-11-5]。彼らが歩いている間にガブローシュ、ジャベール、エポニーヌが加わる[4-11-4~6]。
マリウスは♪恵みの雨の直前までバリケードに来ていない。
・バルジャン
その夜、バルジャンはコゼットがマリウスに宛てた手紙の吸い取り紙を見つけてしまい、コゼットが恋をしていると知らなかったバルジャンは非常にショックを受けていた。[4-15-1]外に出て呆然としていたバルジャンは、ガブローシュからマリウスの手紙を受け取り[4-15-2]、それを読んでマリウスが死ぬかもしれない、と知って大いに安心して喜ぶが、同時に陰鬱になる。そうしてその複雑な気持ちが対立したまま彼はバリケードに出かけた。[4-15-3]
(これは原作ではエポニーヌの死んだ後の場面である。ガブローシュがコゼットへの手紙を運んできた経緯については♪恵みの雨参照)
♪オンマイオウン
◯舞台の補足(原作準拠)
このようなエポニーヌの一人語りなどはない。
原作で、マリウスに金の無心に行った際に彼女が話した言葉が反映されていると思われる。
「〜夜中に街路を歩いてると、木が首切り台のように見えたり、大きい黒い家がノートル・ダームの塔のように見えたり、また白い壁が川のように見えるので、おや向こうに水があるって思うこともあるのよ。星がイリュミネーションの燈のように見えて、ちょうど煙が出たり、風に吹き消されたりしてるようで、また耳の中に馬が息を吹き込んでるような気がしてびっくりするのよ。〜」[3-8-4]
エポニーヌはゴルボー屋敷での事件の後、拘禁所に入れられた後すぐに放免された[4-2-2]が、当然家族は散り散りなので、歌詞通り行くところも暖かい家もなかっただろう。
♪再びバリケードで
◯舞台の補足(原作準拠)
180cm〜210cmほどの高さで、舗石や樽、荷馬車など様々なものを積んで、1時間ほどで出来上がったバリケード。大きなメインとなるバリケードと、小さなバリケードの2つで構成されそれが1つのバリケードのようになっていた。舞台と同じでバリケードが出来てから夜まで攻撃などはなかった。それまで弾薬を作ったり包帯を作ったりしていた。[4-12-5~6]
♪バリケードでのジャベール
◯舞台と原作の違い
・ジャベールは偵察しに行かない
もしその以前に男の様子をうかがったら、彼が特別の注意をもって防寨の中や暴徒らの間を観察してるのが見られたはずである。[4-12-7] と、ひっそりスパイをしているだけに留まっている。
♪ちびっこ仲間
◯舞台と原作の違い
・ガブローシュの見破るタイミング
ジャベールはかなり序盤にスパイバレしている。
・グランテールとガブローシュ
正式な歌詞としてはここが初めての絡みだが、舞台版ではグランテールとガブローシュがこれ以外のシーンでも非常に仲良しである。しかし、原作では一切の絡みがない。面識があったかどうかも分からない。
◯舞台の補足(原作準拠)
ガブローシュは男が「半年ほど前に俺が橋の欄干で涼んでいた時に耳を掴んで引き下ろした」ジャベールだと見破ると、アンジョルラスに知らせる。
その時アンジョーラは、男に近づいていって尋ねた。
「君はだれだ?」
(中略)
「わかってる……そのとおりだ!」
「君はスパイなのか。」
「政府の役人だ。」
「名前は?」
「ジャヴェル。」
とジャベールはバレても正直で全く落ち着いている。
また、アンジョルラスがその場で殺さなかった理由は「われわれは審判者だ、屠殺者ではない。」と述べている。[4-12-7]
♪恵みの雨
◯舞台と原作の違い
死にたいと思うほどに絶望していたマリウスは、エポニーヌの声(♪バリケードを築くを参照)を聞いて、バリケードへ向かう。[4-13-1]しかし、バリケード付近に着いてからも恐れから彼は長い間参加するか悩んでいた。[4-13-3]
原作ではこのタイミングで最初の攻撃が入る。マリウスはガブローシュとクールフェラックが危ないのを見ると、バリケードに入って発砲して助ける。そこで弾が切れたマリウスは火薬樽があるのを見つけ、押し寄せる軍に「退け、防寨を爆発させるぞ!」と松明を火薬樽に近づけ脅した(本気だったが)ことで軍を退散させ、バリケードを救った。
マリウスが火薬樽を見つけて、そちらへ体を向けた時、1人の兵士がマリウスを狙った。その瞬間に手で銃口を塞いだのがエポニーヌだった。[4-14-1~4]
マリウスは軍が撤退した後、小さなバリケードの方が気になって視察をして去ろうとした時、足元から瀕死のエポニーヌが彼を呼んだ。エポニーヌは「あたしほんとは、お医者よりあなたの看護の方がいいの。」と言ってマリウスを引き留め、思い出話やガブローシュが弟であることなどを話し、コゼットが引っ越す前にマリウスに残した手紙を渡す。
「あたしが死んだら、あたしの額に接吻してやると、約束して下さい。……死んでもわかるでしょうから。」
(中略)
「そして、ねえ、マリユスさん、あたしいくらかあなたを慕ってたように思うの。」
彼女はも一度ほほえもうとした。そして息絶えた。 [4-14-6]
・ガブローシュに手紙の配達を頼む(→♪バリケードを築く参照)
エポニーヌにコゼットからの手紙を受け取ったマリウスは、コゼットに自分の死を知らせ、最後の別れを告げること、そしてテナルディエの子でありエポニーヌの弟であるガブローシュを戦乱から救い出すために、ガブローシュにコゼット宛の手紙を運んでくるよう頼む。[4-14-7]
◯舞台の補足(原作準拠)
エポニーヌは、マリウスを安全にコゼットから引き離したくて6月3日の晩から奮闘していた。通りがかりの男と服を交換して男装し、バルジャンに警告(→♪プリュメ街の襲撃を参照)をして彼女の目論見通り転居させる。マリウスに引っ越したことを知らせたいと思ったコゼットは手紙を書くと、庭の前にずっとうろついていた若い労働者(エポニーヌ)に宛名の人に持って行って欲しいと渡してしまう。エポニーヌはそれを渡さずにずっと持っていた。
そしてエポニーヌはこう考えた。
どうせ身を殺すならその死の淵の中へ飛び込んでやり、マリユスをも引き込んでやろう。
そこでマリユスを待ち受け、彼を防寨におびき出せるに違いないと思われる呼び声を、友人らの名を借りて投げつけた。
(中略)
彼女は自分の死のうちに愛する者を引き込み、「だれのものにもさせない!」と言って死ぬという、嫉妬の心の悲痛な喜びをいだいて、死んでいったのである。
エポニーヌはマリウスも死ぬだろうから、あの世で会えると考えこのような行動に出たのだった。 [4-14-6~7]
◯(番外編)映画の補足
映画ではマリウスが火薬樽を持って軍を撤退させるシーンが入っているが、原作とは違いその後周りに糾弾される。原作ではバリケードを救ったことで英雄扱いを受ける。
♪苦悩の夜
◯舞台と原作の違い
・エポニーヌのために戦わない
マリウス以外は、エポニーヌの存在も死も知らない。
・バルジャンの到着
アンジョルラスが「地の理はよく、防寨は堅固だ。三十人もあれば充分だ。なぜ四十人を全部犠牲にする必要があるか?」と言い、妻と子供を持つもの、子供が大勢いる母親がいるものは去れと命じ、国民軍の制服を着て逃げるように呼びかける。しかし、その条件で選ばれたのは5人であったが国民軍の制服は4枚しかなかった。では誰が残るかと口論になったとき、誰かが国民軍の制服を投げ入れた。それはバルジャンであった。 その制服のおかげで5人はバリケードから脱出できた。
・バルジャンは疑われない
マリウスが、突然入ってきたバルジャンを「僕はあの人を知っている。」と認めたため、皆安心して疑ったりはしなかった。 [5-1-4]
◯(番外編)映画の補足
映画ではバルジャンが倒れている兵士の軍服を剥ぎ取っていたが、原作では自分のもの。 バルジャンは法律により国民軍に入っており、年に3、4回見張りの任務をしていた。[4-3-2]その制服でバリケードに来たのである。
♪最初の攻撃
◯舞台と原作の違い
原作ではガブローシュの死の後にバルジャンがジャベールを解放する場面が来る。
◯舞台の補足(原作準拠)
バルジャンはバリケードに来てから一切戦ったりしなかったが、得意の射撃(→♪囚人の歌参照)を用いて、攻撃から守るため入用になった、窓の前に吊るされた布団を撃ち落として散弾の中取りに行ったり[5-1-9]、偵察に来た兵士を帽子を撃って殺さずに退散させたりと[5-1-11]、貢献を見せた。
原作ではもう6月6日の昼頃で、最後の戦いの準備(→♪最後の戦い参照)を始めていた最中、バルジャンがアンジョルラスに尋ねる。
「君はさっき私に礼を言いましたね。」
「共和の名において。防寨はふたりの救い主を持っている、マリユス・ポンメルシーと君だ。」
「私には報酬を求める資格があると思いますか。」
「確かにある。」
「ではそれを一つ求めます。」
「何を?」
「その男を自分で射殺することです。」
ジャヴェルは頭を上げ、ジャン・ヴァルジャンの姿を見、目につかぬくらいの身動きをして、そして言った。 「正当だ。」 [5-1-18]
その後は舞台と同じで、バルジャンはジャベールの縄をナイフで切って解放し、自分の住所を教える。ジャベールはそれを聞くと去って、バルジャンはピストルを空中に撃った。
ジャベールの去り際のセリフに大きな心情の変化が表れている。
「君は俺の心を苦しめる。むしろ殺してくれ。」
ジャヴェルはジャン・ヴァルジャンに向かってもうきさまと言っていないのを自ら知らなかった。
ジャベールとマリウスには面識があるので、バルジャンが「済んだ。」と出てきてジャベールを殺したことを知ると、悪寒が彼の心をよぎった。 [5-1-18]
♪その夜(共に飲もう)
◯舞台と原作の違い
ジョリにはミュジシェッタという彼女がいた。[3-4-4]
グランテールはバリケードに来ていない。(→♪バリケードを築く参照)
◯舞台の補足(原作準拠)
完全に一致するような場面はないが、バリケードを築いた後戦いが始まるまで、プルベールが恋の詩を吟じたり[4-12-6]、6月6日の深夜に食べ物が何もない中ブランデーを飲んだ[5-1-2]ことからインスパイアされていると思われる。
♪彼を帰して
◯舞台と原作の違い
原作ではバルジャンはマリウスにまだこの時点でいい感情を抱いていない。バリケード内で2人の会話や接点もない。
【1832年6月6日】
♪苦悩の夜明け
◯舞台の補足(原作準拠)
アンジョルラスは偵察から帰ってくると、パリの全兵士が動員しているのに対し、民衆は静まり返っている、我々は孤立だと告げる。[5-1-3] (この場面の後♪苦悩の夜で述べた、妻や子、母を持つものは去れというアンジョルラスの命令が下る。「子供あるものと女達は去りなさい」はこの言葉からインスパイアされた歌詞だと思われる)
♪第二の攻撃
◯舞台と原作の違い
マリウスはガブローシュに手紙の配達を頼んだことでバリケードから出したのだが、ガブローシュが帰ってきてしまった[5-1-7]ため、マリウスのテナルディエの息子でありエポニーヌの弟である彼だけは救いたいという願いは叶わなかった。(→♪恵みの雨参照)
バルジャンとマリウスが銃弾を集めてくると志願する場面は無い。
◯舞台の補足(原作準拠)
「まだ十五、六分間しなければ成功とはいえない。しかもそうすれば、もう防寨には十個ばかりの弾薬しか残らない。」[5-1-14]というアンジョルラスの言葉を耳にしたガブローシュは、バリケードを出て国民軍の死体から弾薬を抜き籠に入れ始めた。クールフェラックの警告に関わらずそれを続けたガブローシュは2発の銃弾に倒れた。[5-14-15] ガブローシュの遺体はマリウスが持ち帰った。ガブローシュの集めた弾はバリケードの皆に分配された。[5-1-17]
♪最後の戦い
◯原作と舞台の違い
舞台で六月暴動のラストシーンを飾るのは、バリケードの頂上で散るアンジョルラスだが、原作ではアンジョルラスとグランテールが居酒屋コラントで死ぬのがラストシーンとして描かれている。
◯舞台の補足(原作準拠)
6月6日正午過ぎ、バリケードでは最後の激しい戦いが繰り広げられた。追い詰められた暴徒たちは、コラントに逃げ込み抵抗する。マリウスはこのタイミングで鎖骨に弾を受け倒れ、バルジャンに救出される。[5-1-22] 最後にアンジョルラスだけが残る。部屋の隅に昂然と立ち、兵士らが狙おうとした瞬間だった。
「共和万歳!吾輩もそのひとりだ。」
グランテールは立ち上がっていた。
(中略)
アンジョーラの傍に立って銃口の前に身を置いた。
「一打ちでわれわれふたりを倒してみろ。」と彼は言った。
そして静かにアンジョーラの方を向いて言った。
「承知してくれるか。」
アンジョーラは微笑しながら彼の手を握った。
その微笑が終わらぬうちに、発射の音が響いた。 [5-1-23]
♪下水道
・テナルディエとの遭遇[5-3-8]
舞台ではテナルディエは下水道で会った「死体を荷物みたいに」担いだ男をすぐヴァルジャンと見分けて、あまり会話せずにさっさと逃げていく。
原作では下水道を脱出したいのに鍵がかかっていて出られず困っていたヴァルジャンに、テナルディエの方から「鍵を開けてやるから、その死体の持ち物を半分よこせ」と交渉を持ちかけてくる。この時点ではテナルディエの方では相手がヴァルジャンだとわかっておらず、「俺はお前を知らねえ、だが少し手伝おうというんだ。」と言っている。
・「すぐ来ると思ったぞ」ではない[5-3-9]
原作のジャベール警部は「バルジャンが下水道から現れると知っていて待ち構えていた」のではない。
原作でのジャベール警部はバルジャンに逃がされた後に一度警察署で報告をして、その後またすぐに任務「セーヌ右岸のシャン・ゼリゼー付近を少し監視すること」に戻っている。そこでテナルディエを見つけたので跡を付けてきて下水道出口につき、テナルディエがまた出てくるのを待っていた。テナルディエも警察の動きを知っていて、バルジャンを身代わりにした。
あたりが夜中で暗いのもあり、最初はジャベール警部の方ではバルジャンだと分からない。バルジャンが先に相手に気付いて「私だ、バルジャンだ」と名乗った。
・再会からの流れ[5-3-9~11]
ジャベール警部がバルジャンの「マリウスを彼の家に送り届けたい」と言う言葉を聞き入れて二人でマリウスの家に行って門番に預け、その後バルジャンがコゼットに会いに行きたいと言うのも許してくれる。
ジャベール警部は「ここ(建物の下)で君を待っている」とバルジャンに言ったが、自分の言葉に背いて静かに立ち去ってしまう。バリケードで正体を見破られてさえ保身の嘘さえつかなかった警部殿、最初で最後の嘘がこれ。
バリケードで逃がされた時以降、ジャベール警部のバルジャンへの二人称は敬称になっている。
・問:マリウスは捕まえなくていいの?
答:良くない。捕まえるのが法律上は正しい[5-4(-節なし)]。
マリウスは追求されるべき罪人(暴徒)の立場なので、ジャベール警部にとってはバルジャン(「再犯の凶悪犯」で、住所指定令違反者としても即座にしょっぴける)と同様に捕まえるべき相手。
マリウスを見てジャベール警部自身は「その暴徒は確かに死んでいた。法律上の追跡は死人にまで及ぶものではない。」と考えたのと、バルジャンのことで頭がいっぱいでそれどころではなかったことから、ジャベール警部はマリウスを見逃した件について自身では気にしていない。彼の知らないうちにマリウスは息を吹き返したので、本当は良くない。
♪ジャベールの自殺
◯舞台の補足(原作準拠)
・投身に至るまでの行動や葛藤[5-4(-節なし)]
ジャベール警部はバルジャンの家を離れた後、静かな道を選びながら「セーヌ川に達する最も近い道をたどり」、ノートル・ダーム橋の角に到着すると欄干に肘をついてしばらく考えた。
彼の心は乱されていた。その一徹な澄み切った頭脳は、透明さを失っていた。その水晶のごとき澄明さのうちには、一片の雲がかけていた。ジャヴェルは自分の本心のうちに義務が二分したのを感じ、自らそれをごまかすことができなかった。
彼は自分の前に二つの道を見た。両方とも同じようにまっすぐであったが、とにかく二つであった。生涯にただ一本の直線しか知らなかった彼は、それにおびえた。しかも痛心のきわみには、その二つの道は互いに相入れないものだった。二つの直線は互いに排し合っていた。いずれが真実のものであったろうか。
熟考の末にジャベール警部は近くの分署に行ってそこで15分ほどかけて「制度に関する覚え書き」として取り調べや留置所での小さな不正や不備についてのことを書き記し、封をしたその紙は分署のテーブルに置いて橋に戻った。そして投身という流れ。
♪犠牲者たち:直接的な該当は無
♪カフェ・ソング
◯舞台の補足(原作準拠)
・仲間たちへのマリウスの追憶は[5-5-7]。
♪マリウスとコゼット
◯舞台と原作の違い
・結婚の申込みと許可はバルジャンだけではなく、マリウス側の保護者(祖父ジルノルマン氏)も関わる[5-5-4]
♪バルジャンの告白
◯舞台と原作の違い
・原作では結婚式より後にある場面なので、バルジャンも結婚式に出席している[5-7-1]
・原作ではバルジャンはマリウスに自分の正体を告白した後もしばらくは姿を隠さず、コゼットに会いたくて通ってくる。だがマリウスがそれをよく思わずに嫌がらせをした[5-8-3]ので、訪ねるのをやめて引きこもってしまい、寂しさと絶望で衰弱していった。
♪結婚式
◯舞台と原作の違い
・原作ではバルジャンの告白より前なので、バルジャンも出席している[8-6-1~2]
・テナルディエ襲来[5-9-4]
テナルディエが訪ねてくるのは結婚式当日ではない。婚礼パレードを見てバルジャンに気づいて[8-6-1]、後日やってくる]。また、テナルディエ夫人は獄中で亡くなっていてこの場面にいない[5-5-8]
テナルディエ自身は「バルジャン(マリウスの義理の父)が前科者」ということで強請たかりができるつもりで来た。マリウスがそれを本人の告白ですでに知っていて取り合わなかったのもあり、調子を狂わされながらなんとかマリウスからお金を引き出そうとする。
その過程でマリウスのバルジャンへの二つの誤解「マドレーヌ氏を殺して財産を奪った(実際は同一人物なのでバルジャン自身の財産)」「ジャベール警部を殺した(逆に命を救っていたが、警部が悩み抜いた末に自死してしまった)」を解いた。さらには「バルジャンは死体を担いで下水道にいました、その死体が来ていた服の切れ端がここにあります」と告げたことで「これは僕の服のだ! 僕を助けてくれたのはバルジャンだったのか!」と気づかせる結果になる。
・テナルディエのその後[5-9-4]
テナルディエは来訪の目的だった金銭を受け取って唯一残った家族(次女、エポニーヌの妹のアゼルマ)を連れてアメリカに渡り、奴隷売買を始めた。
ちなみにこの時期はアメリカで「奴隷の即時の解放、段階的成就」の運動が高まっている時期でもある。国家として公式に奴隷制度が廃止されるのは1865年だが、1777年〜1864年の間に奴隷制を廃止していた州もある。
◯舞台の補足(原作準拠)
・(メモ)曜日について 結婚式は1833年2月16日で、「謝肉祭末日の火曜日」[5-6-1]と原作では書かれている。
この日付は私がスマホで検索するとどこのサイトを見ても土曜日と出てくる。この日はユゴー先生自身の思い入れのある日だとのことで、曜日も正しいはずなのだが、検索するとそうなる。
当時の暦法は「革命暦→元に戻す→また革命暦」など二転三転していたので、「当時生きてた人には火曜日だったが、現在から逆算すると土曜日」?(真偽不明)
♪エピローグ ・バルジャンの死[5-9-5]
駆けつけたマリコゼに看取られ、ヴァルジャンが亡くなる。「夜は星もなく、深い暗さだった」。
◯舞台の補足(原作準拠)
・バルジャンからコゼットへの手紙の一部分は[5-9-3]。バルジャンのお墓についての描写は[5-9-6]。
【担当部分:執筆者(Xアカウント)】
・「バリケードを築く」〜「最後の戦い」:Patricia(@ppp_pwp )
・「下水道」〜「エピローグ」:るり(狭倉瑠璃 @140_midaregami)
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